これは、ある暖かな森と凍土の狭間にある小さな錬金術師のお店のおはなしである。
ここはMUYTOYS島にある、ブルー街。星が降る街、なんて聞いたらきっと皆は至極美しい流れ星を頭上に浮かべることだろう。だが、その実際は………
ベシッ
「へぶっ!?」
店番と言う名の昼寝をしていた店主の顔面にそれは直撃した。風に靡く様はまるで、両翼を羽ばたかせる水鳥のようだが。しかしてその実態は、近場の山の地図である。べろん、50枚に及ぶ地図を顔から引き剥がすと、顔をひくつかせつつも、地図を軽く叩いて揃える。
「あんの地図屋、毎回毎回顔面狙いやがって」
愚痴を言いつつ、まぁ特別安価な地図を譲って貰ってる故に文句を言うまい。
そう、星と言うのは名ばか実際は頭上を飛び交う商品の流通を意味するのだ。
地図を片し終え、店主は前以て注文を受けた勇者へハイポーションを届けるところだ。
木組みした箱には、みどりの溶液を詰めたフラスコ瓶達と代金受け渡しの妖精を詰める。
「値段はここに書いてあるやつね」
こくん、と木箱の中の妖精が頷くと店主は木箱を持ち上げた。
開店した当時はフラフラしていた足取りも、なれたのか池を踏み締めて目的地に向かう。
そこにいたのは、楕円を更に伸ばしたような変な生物。すっとんきょうな円らな瞳は、多分誰であっても何を考えてるかわからない。
不思議なこの生物はびゅーんくん。
「いっけー!!」
びゅーんくんと木箱ごと目的地に向かって投げつける。すると、放物線を描いて青空の中へ消えて行く。
ここは街中、後数分でもすれば向こうのびゅーんくんが、商品をキャッチしてくれる筈だ。
「さて、薬草刈りに出掛けますか」
背伸びをする店主の頭上、今日もブルー街では商品が流星のように飛び交う。
おしまい。
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