ロボロフト
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創作系
はじめてのSOLDOUT2
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はじめまして

序章

街の名所となっている、ハート型の泉の側に、茜色の屋根が特徴的な店がある。店というよりは工房のようなものらしく、販売スペースは他の店よりも小規模だ。ここの店主はめったに姿を見せないため、姿を見たことがある者は少ない。
『一度見たことあるけど、とっても小さくて、可愛かったのよ。』
この店の常連らしき少女が友達の女の子にくすくすと話していた。 時刻は黄昏時。空がその店の屋根と同じ色に染まり、島々の建物に明かりが灯り始める頃……だというのに、この店はライトもつけず、光源は窓から差し込む一筋のオレンジ色の光だけ。一応営業はしているのだろう、『Open』と札が掛かったドアは鍵がかかっていなかった。店に入って、耳をすますと、店の奥に広がる闇の中から、カタカタと小さな音が聞こえる。
「こんばんは~!だんなぁ!生きてます~?」
被っていたシルクハットを帽子掛けに掛けながら、暗がりに向かって呼び掛ける。 ……しばらく待ったが返事は無い。だがしかし、先ほどから聞こえていた物音は止んでいた。この店の主が、『客』の存在に気がついたのだろう。
「まったく、明かりくらいはつけましょうや。」
闇の中に向かって文句をいいつつ、持ってきたランプを灯す。ゆらゆらと揺れる照明によって、少し明るくなった部屋はずいぶんと散らかっていた。販売棚には、見慣れた申請書の他に、水晶の中にピンク色の謎の生き物がふわふわと泳いでおり、そのとなりには売り物では無い大きなな招き猫がニヤァと不気味な笑みを浮かべている。まるでピクニックのあと、誰も片付けなかったかのようにごちゃごちゃになっている椅子と机。一つには使用済みらしき木製食器が山積みになっている。その近辺の床には割れたガラスの欠片のようなものが転がっていて、また別の机の上には無数の包丁が突き刺さっている。非力なこの店の店主には作り出せないだろうその光景に疑問をいだきつつ、他の机に視線をずらすと、一つの机だけ、離れた所にあった。他の机と比べると、比較的ましな印象のその机の上には、色石の砕き途中だったのか、虹色で満たされた乳鉢がある。そして、乳鉢の側から机の下へ、ちょんちょんと続く小さくカラフルなスタンプの列。視線を虹色の行き先にずらしていくと、床に布が落ちており、その真ん中はぽこっと丸く膨らんでいた。そして、色もそこで途切れている。
はぁ、とため息をついてしゃがみこむ。
「……だんなぁ?だんなにこっちの姿が見えないからって、こっちもだんなの姿が見えない訳じゃあ、ないっすよ?」
つん、と布の上から膨らみをつつくと、 ひぇっと、甲高い悲鳴が布の中から発せられた。 あわてたように、わたわたと布の下から手のひらサイズの小さな人が這い出て、こちらとは反対の方向に、布を引きずりながらぱたぱたと走って行った。走った後にはレインボーカラーの足跡が布によって撫で伸ばされたものが残っている。少し離れた棚の角から、ぴょこんと小さい頭が覗いた。この小人は、この店『ロボロフト』の店主だ。とても人見知りで、めったに人の前に姿を現そうとしない。時々、物陰から街の店主達の集まりをそわそわと伺っているのを知っているが、まず話しかける勇気が無く、例え話しかけることが出来ても、緊張が頂点に達し、直ぐに逃げ出してしまう。
「な、なんで、わかったの?!完璧に隠れられてた筈なのに!」
「いやいや、『なんで』じゃ無いでしょ。足跡ありましたし、布不自然に膨らんでるし。」
「あ、足跡……?」
布をマントのようにひらりと羽織って、店主は辺りを見渡す。男の足元から自分の元に続く色とりどりの模様を見つけたようで、店主はそっと、かかとを持ち上げて足の裏を見た。そして、再び悲鳴が上がった。

***

「いやぁ、そんなに落ち込むこと無いですって、あっ、むしろかわいい感じに模様替え出来て良かったんじゃ?」
「……絶対怒られる……うちの妖精達に。」
時はあれから少したち、店主と二人でそこらじゅうにある足跡を消そうと頑張ったが、色石を砕いて特殊な油と混ぜて作った顔料は、思いのほか木材に強くこびりついて、はっきりとその姿を見せている。
「妖精と言えば、そもそも、なんで、だんなが顔料砕いてんです?妖精もさっきから見当たらねぇですし。なんか、この部屋全体的に散らかってますし。」
この店は、作業に特化した造りになっている。当然、妖精の人員も作業場に多く割かれていて、8人ほどいる。妖精達に創業2日目で戦力外通告が出された店主が作業をしなければならないなんて、切羽詰まった状況には、並大抵の事ではならないだろう。
「うっ。」
店主は、小さく呻き声をあげると、顔を伏せた。
「店主?」
「……た。」
「ん?」
店主が何かを言ったようだが、体格差もあり、肝心な部分が聞こえなかった。
「すいません、聞き取れ無かったんで、もう一回お願いしやす。」
耳を店主に近づけてその言葉を待つ。直後、悲鳴に近い甲高い声が耳を貫いた。
「集団ストライキされた!!!」
「ぬぁぁ!耳が!って、えぇ!?」
嘘だろう……この店主、今度は何をやらかしたんだ?

はじめまして

はじめまして、トパーズ郊外の片隅に『ロボロフト』という店を出店している者です。店名の由来は、ハムスターの『ロボロフスキー』と、『ロフト』を掛け合わせた名前です。職業は作家です。最近伝説になれまして、真・グリモワールを書き上げました。そして、禁断の書に向けて、引き続きレベリング中です。創業300日ちょっとです。(ちなみに、この記事を書き始めたときは創業二桁代でした。)これから、色々記事を書いていきたいです!

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