葉月三等兵
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二次創作イベ「ある日の調査員の話」

トパーズ街の中央部に流れる一筋の川が氾濫を始めて数ヶ月。

多くの店が手を尽くした結果、通称トパーズ池という名所になったものの、今も上流から流れる水の量は増えるばかりだ。
だったら新たな川を作ればいいと一部の者が既に草原まで支流を延ばしたようだが、そこは仮にも街だというべきか。
大都市に比べれば少なくとも人はそれなりにいて、その立ち退き作業に時間が掛かっているようだ。

立ち退きといえばトパーズ池には周りを水に囲まれることを恐れずに店を構え続ける者達がいる。
もちろん水という資源は需要も高くそれを得るためなら多少の不都合も我慢できるのだろう。
しかし、その水を得ることもせず色々な分野に手を出しては去っていくという得体の知れない店がある。名を天照葉月屋と冠している。

「あまてらすではない。てんてるだ」

これはその店の従業員の妖精らがよく口にしている言葉だ。よだれを垂らしながらどこを見ているかわからない顔をしているのにたまに読み間違えると、表情を一変させてそう訂正するのだ。たまに食い気味で来たりするのでそれを見るためにわざと間違える者もいるとか。

そんな話題としては出てくるもののその店主の姿を見たことがあるものは最近までいなかった。
……いや、見たことがないというのは間違いか。我々は見ていたのに信じたくはなかったのだ。

店主がスライムだなんて!

スライムといえば勇者達が定期的に退治しているというモンスター。 なぜあの店主は無事なのか住民達に聞いても「あぁ、あのスライムはいいのよ」と皆笑って相手をしていない。勇者も「あーてんてるさんかー」と苦笑するばかり。いったいあのスライムはなんなのだ……

翌日、調査期間を終えて本土へと戻る我々の元へ木箱が届いた。中を見てみるとそこにはこの島でしか作られていないラム酒とひとつのメッセージカード。

「またね」

その短い一文とともにあの妖精がしていた顔が添えられていた。つまりあの妖精は……

怖くなった我々は気を紛らわそうとラム酒を手に取る。あぁくそう美味い。

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