私たち妖精の仕事は様々で、作業はもちろん棚の品物が売り切れた時のお知らせもしなければいけない。
いや、店のほとんどのことが私たちの仕事とも言える。
「店長!!商品がひとつ売り切れて…あれ?今いないのね」
けれどそれは店長の指示があればの話で
「んー…よし!みんなー店長いないし指示待ちの人はお休みなの!」
店長なしでお店は動かないのである。
「えっ店長まだ来ないのです?」
仕事がないのでのんびりと休んでいた私の元に来た彼女の話は、のんびりしていた気分を吹き飛ばした。
「そうなの木槌さん…あれから追加でもう一つ商品が売り切れたのにまだ来ないの…」
そう告げる彼女はお休みを宣言した時とは正反対に不安そうな顔をしてうつむいている。
いつもなら仕事がなくなる前には指示してくれる店長がまだ来ない、それは店長のお手伝いのためにいる私たちにとっては貴重なお休みの時間であり、
もう来ないのでは…と、考えてしまう不安の種にもなるのである。
「はあ…不安そうな顔しないの!店店長がいないのはよくあることでしょ!どうせ棚の補充のこと忘れてるだけでしょ」
いつもの事だから、あのうっかり店長ならそうだろうと励ます。
すると彼女は先ほどまでの不安なんてなかったかのように
「それもそうなの!店長ならやりそうなの…なら、今のうちに休みを満喫するの!木槌さんありがとうなの!」
そう告げると瞬く間に飛んで行ってしまった。
彼女がいつもこんな感じなのはわかっている、わかっているのだけど今回のはちょっと厄介と思った。
「…もう、不安が移っちゃったじゃないですか」
どうやら彼女は去る前に不安の種を置いて行ったようだった。
どれだけ時間が経っただろう、
…いつも叩いてるから嫌になったのかな
…いや、あれも本気で叩いてないしそれは店長がさぼるから
…もし、このまま戻ってこなかったら
いつも休みをくださいと言っているのに、せっかくのお休みなのに楽しいはずなのに、考えれば考えるほどぬぐいきれない不安に押しつぶされそうになる。
「店長…まだですか…」
つい、胸に溜めきれなくなった不安を吐き出すようにつぶやく
【オーナーが入店しました】
「店長!!」
店長が戻ってくるとお知らせされる機能
いつもなら、お休み終了というちょっと嫌なお知らせは今日に限っては憂鬱気分を吹き飛ばした。
「うわっ!売り切れ!?うそ!」
遠くから聞こえる店長の驚く声に引っ張られるように飛んでいく
ああ、今日くらいは優しくしてあげようかなと思いながら無意識に木槌を取り出す。
「店長!商品補充忘れて何してたんですかあ!!」
「木槌さん!?ごめんな…ぐはあ!」
「…あ、やっちゃた」
店長をつい叩き倒してつぶやく
もはや、役割とさえ言われた叱り癖は簡単には抜けないようです。
「うう…よし!みんなー指示だすからお願いね」
「ええー!」
「お休み終わりなのね…」
すぐケロッとした顔をして指示を出す店長にブーブー文句を言いながらも楽しそうな顔をしてお仕事に向かう彼女たち。
「それじゃ、木槌さんもお仕事頑張ってね」
「店長もですよ!」
笑顔で言い合いお仕事をはじめる。
こうして、私達のお休みは終わりお店は動き出す。
お休みが好きと言う私たちだけど
みんな、店長と一緒にお店で働くのだって大好きなんです。
店長には内緒ですよ?
おしまい
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