イベントにかこつけて初投稿です。ついったは3000円の男ですが店舗名は夏日の名残。SS未満の駄文ですがよろしければ見てやってください。
「――さて、もう結構片付いたかな」
10月某日、昼下がり。私は様変わりした店を見回して一息ついた。つい3時間前、私の城はこの島にたどり着いた人たち全てに与えられる、所謂”初心者向け”の店舗だった。それはそれで使いやすかったのだが……今の店舗はより作業スペースが広い「アトリエ」だ。割かし移り気で、手広くいろいろなことをやりたがる私にとってはこちらのほうがいい。目指している一流の裁縫師にもなりやすいし。
「この島に来てから1か月くらいか……」
長かったような、短かったような。決して長いといえるような時間ではなかったけれど、短期間に色々やったせいか、どうにも体感時間が狂っている。「少し、休憩しようか」片づけを手伝ってくれた妖精さんたちの分もコーヒーを入れ、休憩室のソファに腰かけた私は始まりのあの日を思い返していた――。
何気なく手に取った本に載っていたMUTOUS島に心惹かれた私は単身で島に乗り込んだ。手には支給された近所の地図が5枚。面白いキャッチコピーに我ながら見事にひっかかかり、移り住む町はトパーズ村に即決。店の場所は水辺がいいと探していたら、村の中心付近の小さな池の畔が空いていたのでそこに。ちなみに後から住所を確認したら15番地15となんともキリのいい(?)数字だった。店の名前は「夏日の名残」。理由は単純、暦の上では秋だったけれど、まだ涼しくなるには程遠い頃だったから。
島に来る途中で受けた講座通り、まずは近所の地図で付近を探索。ここで地図が破れることを初めて知って驚いた。今ではもう慣れたけれど。採れた材料の一部――例えば薬草――を棚において、枝と水を使って紙を作って。地図を作ろうと思ったらペンが作れなかったから、初めて仕入れをしたっけ。資金もないし、不自由なことばかりだったけれど、だからこそ自由だった。何もないけれど、何でもできる。何者でもないけれど、何にもなれる。そんなところに惹かれてこのMUTOYSに来たのだから。
「夏日の名残」#14425
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