私は妖精。このMUTOYS島にビックリする位沢山居る妖精の一人。
名前? 無いよ。他の生き物と違って名前を付ける人から生まれてくるわけじゃあないから。
どうやって生まれてくるのって?
えー、私もわかんなーい。
ただ、わかってるのは、突如ここに生を受けたって感じ?よくわかんない。
今の私は仕事がない。ここにいる妖精達も仕事がない。
この島では何故かたっくさんの私達が、ぽっと現れるの。
その理由もよーくわかってない。
ここの島の政府は、そういうたっくさんの妖精達に仕事を与えて生活を営めるように、
新しくお店を出す人のお手伝いさんとして働くように言いつける。
なにもしない私達はそのへんでイタズラしかしないから、
他の島で生きる人にめいわくなんだってさー。ひっどいこと言われてるよー。
でも、他の子は分かんないけど私は分かるんだ。
ちゃーんと「もくてきいしきをもて」だっけかー。私すっごい難しい言葉使えるんだよ。
とりあえずどういうアレで集められたかわっかんないんだけど、
なんとか指で数え切れるぐらいの妖精達と一緒にここにいる。
新しい店主、つまりご主人様がここに現れるんだって。
大体新しいご主人様達は島の外から船で移民して、
この島にお金儲けの夢見たり、色々やってみたいことを胸にひめてここにくるんだってさ。
たまーに勝手知ったる島の住民が新しいご主人様になるってこともあるけど、
そういうのはかなり珍しい例らしい。大抵は島の外からくる。
なんでもそれが「せいふのせいさく」だって。難しい言葉がまた出てきたよ。
だから、大抵のみんなは船着き場で待たされる。移民だもんね、そうだよね。
でもね、今の私達が待ってるところはね…
周りに砂としょっぱい水しか見えないって言っていい場所…
なんでここに連れられたんだろう?
「君達のご主人様は多分この辺に現れるからね。」
と、あんまりにも適当なことを言って役人さん帰っちゃった。
そんなんじゃ、誰がどの辺に現れるかわかったもんじゃあなーい!
あ、砂浜に人間が打ち上げられてる…
えー、まさかこの人が新しいご主人様ー!??それなくなーい!??
いや、そんなこと言ってる場合じゃないよ、助けないとっ!
……
とりあえず、息は大丈夫、意識はかろうじてあるかな?
この人何でこんなことになっちゃったんだろう?
少し落ち着いたかなって思ったときに聞いてみた。
なんでも、小さなヨットで、この果てもしれない海を目的地もなく航海してたんだって。
で、この島が見えそうな所まで来たんだけど、座礁してヨット沈んじゃったんだってさー。
なにそのすっごい不幸、というかヘッタクソ船乗り?
とは思ってたけど、なんかこの人放っておけなくなっちゃった。
なんで案内した人はここに現れるか知ってるの?とか言って怖いって話もしてる子居たけど、
そんなの気にしてたら、この島のたっくさんの不思議と付き合っていられなーい!
「はい、この島の地図だよ。これを頼りに貴方はこの島で商売する、決定ね。」
と、これだけ伝えればいいという役人さんの言葉を適当に言い換えて、
新しいご主人様となるべきだったかどうかは分かんないけど、
その人に伝えて、地図を渡した。
新しいご主人様は、砂浜で仰向けになったままで、
地図を真剣に眺めてた…。
なんか、その目は普通の人じゃあ出来ない、特別な目をしてた。
悲壮さが微塵もない、今この場を楽しんでやろうっていたずら心にも満ちた目。
ああ、これ私達が楽しいことをしてる時の目とおんなじだ。
「そうそう、ここにいる妖精達はこれから貴方のお手伝いする子達よ」
私は、この人だったら一緒に楽しくお仕事出来そうだと思えて、次の言葉を伝えた。
えーっ、とか言ってる子もすこし居たけど、
ソコはみんなの仕切りを言いつけられてる私が口を塞いだ。手と砂で。
「…そうか、なんだかよくわからない事態に巻き込まれたが、そういうことにするか。」
と、ご主人様は言った。そして
「君の名前を教えてくれないかな?」
つづけてそう言った。
ドキン と した
そう、私には名前がない。呼んでほしい名前を持っていない…
私はうつむき加減で、しばらく黙ってた…。
「…そうか、じゃあこれから君の事はミーって呼ぶことにするよ、いいかな?」
ご主人様は、そうしてた私にするべき答えを見つけたんだろうか?
私に初めての名前を付けてくれた。
名前をもらえたことが素直に嬉しかった。
「じゃあ、どうせ他の子たちも名前ないんだろう?いま考えてあげるよ!」」
他の子たちもきゃあきゃあ言いながらこれから、
ご主人様となる人の服を引っ張ったりして、我先に名前をもらおうとしてた。
そうか、なんかわかった気がする。
私達が名前もなく、ぽっと生まれてくる理由。
きっとそうなんだよ。うん。
えっ、どういう理由だって?
私むずかいしことばわかんなーい!
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