神様が~、うんぬんで、あーだこーだ(略)。
というわけで、僕はこの世界にやってきたのである。
しかし……。
おかしい。なにかがおかしい。
異世界とは、勝手に美少女とお近づきになるイベントが組まれているはずなのだが、僕はそうした人物と出会っていない。
しかも、僕はこの世界でいわゆるチート的な能力を何一つ手に入れていない。この世界は、なにか狂っているのかもしれないな。
唯一発生したイベントは、無味乾燥としたチュートリアルだけだった。
不慣れな異世界で僕は、「訓練所への地図」の作業とやらを「実行」して「作業訓練完了報告書」を手に入れた。
なんだこれ。紙切れ一枚かよ。味気ない。女はどうした。
「この報告書は、100円から1000円くらいの値段で市場に流すか、クイックポーションと交換するといい」
顔の見えないチュートリアルのやろうは、そんなことを言っていた。
死ねハゲ。はやくかわいい女の子を実装しろ。不具合。詫び石はよ。
しかたないので、僕は、この報告書を金と交換することにした。
何事も金だ。金。金。金。
「……しかし、これ NPC に売るわけではないんだよな?」
チュートリアルは「100円~1000円」とか言っていたが、この異世界は、たしかこういうキャッチフレーズがあったはずだ。
「憧れのファンタジー世界にお店を出してみよう!お客はなんと他のプレイヤーだよ!」
他のプレイヤー……に売るんだよな?
相場って「100円~1000円」で、さすがにあってるんだよな?
念のため、僕は、仕入れの画面を呼び出し他のプレイヤーが売りにだしている「作業訓練完了報告書」の価格を見てみた。
「6000円、7000円……なんだこれ」
どういうことだ。この異世界。
僕にやさしくない。むしろ、いきなりカモろうとしてきてるのか!!
カモにならない異世界転生
僕は、情報をあつめることにした。
もちつけ KOOL になるんだ。
仕入れの画面をよく見る。と、外部サイトの項目に「SO2 市場調査」というものがあるのがわかった。
この異世界のサイトは、なんと「無料」で諸表の情報を提供しているようだ。もうひとつの異世界が、ここに……!!(しかし、女の子はいなかった)
僕は、さっそく他のプレイヤーの購入履歴を知るために「ユーザー購入推移」の表と NPC の購入履歴「住民購入推移」の表を調べてみた。
「住民でも6000円くらいまで買っとるやんけ……あのくそチュートリアル」
僕は憤怒した。
あの邪智暴虐なチュートリアルは、改めねばならぬと決意した。
はじめからチュートリアルは、転売屋とグルだったのだ。
お前もか、チュートリアル!!
結局、僕は7000円で売りに出した。
最初のうちは、販売枠なんて、あまりがちなのだ。のんびり売りにだして売れなければ少しずつ下げていけばいいと思った。
その後、作業訓練完了報告書は1時間ぐらいあとに7000円で売れた。
チュートリアルに騙されていたら、僕は最悪70分の1の報酬と引き換えに、数日後、顔を真っ赤にして自分の愚行を嘆くことになったのかもしれない。
「おかしい。このファンタジー異世界は、なにかおかしいぞ」
僕は、やってくる世界を間違えたのかのかもしれない。
そんな疑問は、見てみぬふりをした。この世界にチートはなさそうだ。
ならば、今日も生き抜かねばならない。
僕はハンターボウを片手に、今日も山に “フレンズを狩りに” いく。
オーナー番号#35028
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