はあ、今日も暇ね……あの人ったらまたミノタウロス♀を捕まえに行っちゃったし、販売妖精ちゃんもいつのまにかLv9になってるから店番も任せられるしね。まあ、もう倉庫番なんて慣れっこだし、今日も無意味に保管庫にいる金魚ちゃんにエサでもあげてようかしら。
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カランコロン
あら、お客さんかな。……って、販売妖精ちゃんどうしたの?倉庫はお客さんでも入れちゃダメってあの人が……
え?お客さんじゃなくて最近島にやってきた新しいお店のオーナー候補ですって?ふぅん、それでその新人さんがあたしに何の用なの?悪いけどあたしは売り物でも店主でもなくて……
え?この島がどんなところか教えてほしい?あのねえ、あたしだって暇じゃないのよ。あの人が散らかしてる倉庫、妖精ちゃんだけじゃ片付けきれないからこうして手伝ってるってわけ(ま、さっきまでサボってたけど)。い、いやそんな悲しそうな顔しないでよ、わかった、わかったから表の棚からコーヒーでも一杯持ってきて座りなさい。お金?いいよそんなの、あたしがおごってあげるから。
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で、この島について知りたいんだったっけ。それがねえ、あたしも色草としてこの島育ちだけど正直よくわからいことだらけなの。だから、代わりと言ってはなんだけど、この絵本に書いてある昔話を読んであげるわ。あら、内容は結構ちゃんとしてて、子供だけじゃなくてお姉さんも買っていく本格派よ。
えーと、じゃあ……
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むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山に薬草むしりに、おばあさんは川に水汲みに行きました。おばあさんがせっせと水を汲んでいると、なんと大きなスワンボートがどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。おばあさんがスワンボートの中を覗き込むと、小さな男の子が寝ていました。おばあさんは男の子を家に連れて帰り、スワンボートはそのまま流しておきました。
おじいさんが大量の薬草と木の枝と石と丸太と鳥の羽根を持って帰ってくると、男の子を見てびっくりして、おばあさんに聞きました。
「ばあさんや、その子はいくらで売れるんじゃ?」
おばあさんが言いました。
「いやですよおじいさん、この子は売り物じゃありません。実はねえ……」
おばあさんが今日の出来事を話していると、男の子が突然言いました。「ミミ!」
「おやまあ、この子の名前はミミ太郎だよ」
「ああそれがいい。ところで明日の薬草はいくらで売れるかのう」
そうして、ミミ太郎はおじいさんとおばあさんにスピードポーションをたくさん飲まされてすくすくと育ちました。
そんなある日、島の一部で悪さをする集団がいるという噂を聞きました。具体的に何をしているのかはわかりませんが、とにかく悪いやつらだということです。
さっそくミミ太郎は悪いやつらをこらしめるために海岸へやってきました。腰にはおばあさん特製のすああまをつけています。と、海岸ではヌシがいじめられていました。
「この倉庫圧迫野郎!」「おらっ!酒にしちまうぞ!」
ミミ太郎はいてもたってもいられず、その辺に転がっていた木刀でいじめっこたちを追い払いました。
ヌシはとても感謝して、お礼に竜宮城へ案内すると言い出しました。ヌシに連れられてきた竜宮城では、イカやタコが踊り、金魚がオリハルコン原石を吐き出すショーが見られました。竜宮城の主である気まぐれな妖精が言いました。
「これをお土産に。でも倉庫に余裕のないときは決して開けてはなりませんよ」
ミミ太郎は不思議に思いながらも、家に帰ることにしました。
するとどうでしょう。家の周りは草原だったはずなのに、道が敷かれています。「これじゃあ草木こりは商売あがったりだ、明日からは魂の水を仕入れて売らないと」
そこで思い出したのは竜宮城でもらったギフト券でした。
「おれたちの戦いはこれからだ!!!」
そしてたくさんの地図を手に入れたミミ太郎は魂の水をたくさん入手し、道沿いのお店でたくさん売って大金持ちになりましたとさ。
おしまい。
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どう?ちょっと長かったかしら……ってちょっと!あの新人さんもういない?!え?スワンボートのあたりで回れ右して帰っちゃった?あちゃー、あたしとしたことがやりすぎちゃったみたい。まあこの程度で音を上げるようじゃこの島でこの先生きのこれないでしょ。
テーテレッテッテー♪
あら?あなたお帰りなさい。どう?ミノさんはたくさん?そう、それはよかった。
え?何か言うことはないのかって?そ、そんなの言わなくったってわかってるでしょ。
……ちゃんとあたしの口から聞きたい?もう、今日だけ特別よ。
その、あたしなんかをそばに置いてくれて、いつもありg……
へ?違う?今日は「あの日」だろって?
あー、そっち。赤くなって損した。
ふふっ、冗談。ちゃんとわかってるってば。
開店1周年、おめでとう。これからも頑張ろうね。
たるき亭#2753
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