誰かに値段をつけられる人生なんてまっぴらだって青臭いことを考えていた時期もある。今思うと若かったなって思うけれど。
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今日も店主は暇そうに散らかった倉庫を眺めてあくびをしているし、作業妖精さんは慣れない作業をさせられてあたふたしている。今日は砂を掘りに出かけてるのよね、ここ草原なのに。
なーんて、倉庫の隅っこでぶつぶつ言ってるあたしも暇なのよね。昔は店主もあたしに夢中で、たくさん脇道を探索してたのに、今じゃすっかりお払い箱。一緒に倉庫にいるミノタウロス♀の視線に怯える日々だなんてね、女が廃るわ。あっでもミノさんに食べられるのはちょっと嫌かな……店主ったらあたしをエサにできるように、なんて島の偉い人に掛け合ったこともあるって聞いたけど、さすがにそれはどうなのよってね。
うちの店主、ちょっと変わってるっていうか、オヤジくさいっていうか、自分でアメジス党とかいうの作っちゃってさ。勝手に党首だとか言って張り切ってるけど、本当にしょうもないただのオヤジギャグなのよねアレ。あたしも最初に聞いたときどうかと思ったけど、意外に街のみんなには気に入られたみたいで、図に乗っちゃってさ。勘弁してほしいよ、お店のキャッチコピーにまでしちゃってるって恥ずかしすぎない?
……そういえば、その党首様はどこへいったんだろう。お店は販売妖精さんに任せて自分はどこかへ行ってくるって言い残してさっき出て行っちゃった。まあいいか、いつも通り倉庫の石さんとおしゃべりしてようかな。ねえ、石さん――
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あっ、店主じゃん、おかえり。ちゃんと留守は守っといたよ。えっ……?お前の出番だって?何言って――
……で、まとめると、あちこち駆けずり回って色草の高値注文を請けてきたから、あたしにそれに応じろってことね。まあ、あたしも自分を安売りするような女じゃないから高く買ってくれたほうが嬉しいけどどうしてそんなに急なのよ。
え?島の注文方式が変わるからその前に?へー、あたし知らなかったな。だってあたしいつも安値でしか注文してもらえなくてね、悲しくなるから自分でも市場の情報を確認するのやめてたみたい。あるでしょ、そういうの。占いはいい時しか信じない、的な?違う?そう。
そうね、誰にも値段をつけてもらえない人生もさびしいもんね。
でも、今回の話はお断りよ。あたしだって値段をつけてもらいたいけど、でもそれは本当にあたしを必要とする人につけて欲しい。
汗垂らしながら、作業妖精さんと一緒に地図片手にさ、「虹色の草があるって聞いたんだ」って目をキラキラさせながらあたしのところに来てくれた人みたいに。
オヤジくさいしぶっちゃけ商売のセンスもないし、ことあるごとに1693Gでモノを売って「色草値段だ!」ってはしゃいじゃってさ、バカじゃないのって。
……だから、ほかの誰でもない、あんたのつけた値段であたしを売ってよ。
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思い切って恥ずかしいこと言っちゃったかな。でもそしたら急に慌てて取り消してくるってまた飛び出して行っちゃった。なんでそこで怖気づくのよ、バカ。
でもまあ、やっと倉庫妖精さんとも仲良くなってきたし、しばらくはまた倉庫の掃除でもしててやりますか。ふふっ。
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