はじめての勇者
MUTOYS島にはモンスターが存在している。
そのモンスターに立ち向かう勇気ある者たちを人々はこう呼ぶ。
―――勇者―――
あるものは街近辺の森でスライムが街に溢れることを防ぎ
あるものはミノタウロス♀を捕獲し
あるものは焼け焦げた大地で強大なモンスターへと立ち向かい
そしてあるものはただひたすら骨に挨拶している。
私だ。
11月1日、ステイン博士の魔法が解け、島に平穏が訪れると思っていた店主たちの下へある知らせが舞い込んだ。
―――白いドラゴンが目撃されました―――
白いドラゴン?ホワイトドラゴン?
ブルー○イズホワイトドラゴン?
多くの憶測が飛び交う中、その正体はすぐに明らかとなった。
スカルドラゴン
スカルドラゴン?骨龍?骨龍……
骨!?!?!?!?
そのとき私の身体に衝撃が走った。私が店主として活動している名前。
骨師てぃー
骨師。骨を司る者としてスカルドラゴンの出現は見逃せないものであった。
そのころ私はルビー街の中心街へ引っ越したばかりで、住民売りに楽しさを見出し始め、自分の店の周りを道にするかなどをルンルンで考えている頃だった。ご機嫌だった。しかし勇者にとって、その土地はあまりにも適性がなさ過ぎた。
「ルビーの熱帯雨林に引っ越すか?」
「引っ越したばかりでこの土地を手放すのはもったいない」
「勇者は道沿いじゃないから住民売りが難しそう」
「そもそも勇者レベル3しかない」
様々な考えが頭をよぎる。大いに悩んだ末、私はある結論を出した。
「そうだ、焦土に行こう」
そう。思考を放棄したのである。焦土へ行くと決めたそのとき、私はちょうど爆撃*1を控えていた。爆撃でたまったお金で焦土の奥地に引っ越そう。そう決心したのだ。
そして数日後、数人の店主に助けてもらいつつ計画通り私はアダマンチウム街の焦土へ向かった。
その日以来、アダマンチウム街では骨を身に纏った店主の陽気な声が響き渡っている。
「こんにちはこんにちは!」
*1 50回作業を複数枠分貯め、1日で作業完了を受け取る行為。1日だけ極地的に利益を出したい時に使う。必然的にランキングで上位を取り、売り抜くために相場を下げるという荒らし具合からこう呼ばれている。犠牲者は主に杖細工師。
骨師てぃー#4844
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