フリーランスの何でも屋で主に住民向けに商売してるセリチジンのポケットと申します。
コラボ企画のために創作小説的なのを書いていたら、締め切り終わってたでござるorz
でもせっかく書きあげたので晒してみる。
「この島はとてもいい所だよ。君も来ないかい?」
ある日、吟遊詩人になるといって旅に出た友人から手紙が来た。
何でもその島では誰でも簡単に、そして自由に商売ができるらしい。
村での生活に飽き飽きしていた俺は、その話に乗ることにした。
あなたの性別は? あなたは、どこから来ましたか――
入島証明書のいくつかある項目を書き終え窓口に提出すると、新規出店者への支給品として店舗近所の地図と作業がはかどるという薬、そして駆け出し用店舗改装移転券なるものを貰った。
「あのー、開店資金の支給とかないんですかね?」
「ありません。自分で稼いできてください。それがこの島での生き方です」
窓口のお姉さんに笑顔で言われ、とぼとぼとその場を後にした。
「金も無いのに店だけ貰ってもどうしようもねぇよ……」
そんなことをぼやきつつ、ひとまず自分の店に向かうことにした。
うっそうとした木々の中歩き続け、息を切らしながらも自分の店にたどり着いた。
「あー! やっと来た!」
俺の目の前に小さな妖精が飛び出してきた。
「初めまして! これからよろしくね!」
「え、ああ、よろしく……」
彼女の元気に少し戸惑いながら挨拶を済ませると、彼女は矢継ぎ早に説明を始めようとした。
それを俺はちょっと待ってくれと押しとどめた。
「ここまででだいぶヘトヘトなんだ。ひとまず店の中に入って休ませてくれ」
一休みしたのち、改めて彼女は説明を始めた。
彼女はMUTOYS妖精協会からこの店に派遣されてきたそうだ。
オーナーごとに必ず彼女達が派遣され、主な営業を行うのだとか。
俺はこれからどうすればいいか彼女に質問した。
「近所の地図を貰ったでしょ? それを片手に売れるものを探せばいいの!」
そういうわけで彼女と一緒に外に繰り出し、何か売れるものを探すことにした。
地図を頼りにあたりを物色し、めぼしいものをある程度集めた後、店に戻った。
「なあ、こんな石ころでも売れるのか?」
「ちゃんと売れるよ! これを見て!」
彼女は光る不思議な本をばっと開いて俺に見せた。
各地の店舗にいるお手伝い妖精から集めた情報を見ることができる魔法の本で、MUTOYS品物販売大全というらしいらしい。
それで確認すると、ちゃんと石ころも商品として扱われていた。
ちょっとびっくりした。
「……とりあえず陳列してみるか」
「どんどんやってみよー!」
販売大全を参考に値段を決めいくつか商品を並べ、彼女と店番をすることにした。
色々彼女に質問したり販売大全を眺めながら過ごしていると、店の扉が開く音がした。
「おお、ここが君の新しい城か」
そこには、俺をこの島に誘った友人がいた。
「お、久しぶりだな。元気にしてたか?」
「君の方こそ。本当に来るとはね」
新規出店者の欄に君の名前があったからもしやと思いやってきたよ、と友人は続けた。
「ガランとしているね」
「今日開店したばかりなんだ。仕方ねぇだろ」
そういやあいつ思ったことすぐ口に出すやつだったな。
ちょっとイラっと来たので、何か買ってけと友人に言った。
友人はガラガラの棚をしばらく眺め回ると、薬草を手に取った。
「せっかくだからこれを貰うよ。旅をしていると何かと使うからね」
代金を払うと、また来るよと言って記念すべきお客様1人目はその場を後にした。
「初売り上げだよー!」
「知り合いの友情購入だけどな」
歓喜で飛び回る彼女をなだめつつも、少し喜んでいる自分がいた。なんだかんだで商売した実感があったからだ。
自力で売れるものを探し、棚に並べ販売して金を稼ぐ。
俺のMUTOYS生活は始まったばかりである。
セリチジンのポケット♯11333
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