この物語はややフィクションが混じっています。
(リンクシェル:某14ちゃんで使用される通話機器。MUTOYS島でも使えるようだ)
「唐突ですが、明後日この取引を終了したいです」
リンクシェルから聞こえてきたのは、いつもとは違う返答だった。
唐突な返事に一瞬驚いたが、ショックを受けることはなかった。
いずれ、いつかは終わる取引だと思っていたから。
・・・
「手伝っていただきたいことがあります」
取引は彼から持ちかけられたものだった。
「毎日2セット、商品を売っていただきたい。値段は・・・」
当時、その業界で駆け出しだった私には破格の値段だった。
「了解しました!よろこんで!」
この商機を逃すわけにはいくまい。私は二つ返事で了承した。
「置きました!」
リンクシェルにそう呼びかけると、どこからか輸送妖精が現れ、
手馴れた手つきで商品を抱えると、代金を棚に置き、去って行く。
「買いました!」
しばらくすると、リンクシェルから彼の声が聞こえてくる。
こうして取引は始まった。
「すみません、今輸送妖精が全員出払ってて・・・」
「置くの遅れましたぁ!」
「寝 て ま し た !」
うまく取引ができない日もあった。
値段指示を間違え、違う妖精に買われて行き、彼の妖精に白い目で見られる時もあった。
そこに彼はいないのに、リンクシェルに向かってペコペコ頭を下げる時もあった。
・・・
相場を確認し、販売妖精に指示を与える。
(今日の相場は高いな・・・)
私はそう思いつつも、リンクシェルに向かって「今日の分、置きました!」と喋りかけた。
しばらくすると見慣れた妖精がやってきて、いつものように商品を抱きかかえ、去って行った。
「こん・・・」
(こんどは何を目指すのですか?)
リンクシェルにそう喋りかけようとして思いとどまった。
(・・・愚問だ。自分が知りたいだけじゃないか。)
「最後の日にぼったくられた・・・」
リンクシェルから聞こえてきたのは彼の声だった。
偶然か必然か。その値段は取引を始めた時と同じ値段だった。
だが信頼の腕になった者が売るには、暴利とも言える値段には間違いない。
「値決めの約束ですからね!」
私は笑いながらそう答えた。
ふと保管庫のことを思い出す。
この取引の為、常に在庫を用意していたのだ。
(バトル街のセールまでまだ日があるし・・・売っちゃうか)
販売妖精に再度指示を出す。今度は市場最安値。
見計らったようにいつもの見慣れた妖精が現れた。
手馴れた手つきで商品を抱え、棚に代金を置く。
驚いた顔をしている私を見つめ、一礼して妖精は去っていった。
「買いました!・・・悪い人ですね」
リンクシェルから再び彼の声が聞こえた。
「いままでありがとうございました!」
取引終了の合図。
「こちらこそ、ありがとうございました!」
小さくなっていく妖精を見つめ、私はリンクシェルのスイッチを切った。
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