……一人黙々と作業をする店主の姿が店から消えて、どれくらいになるだろう。
彼はそもそも、島の外で暮らしている。
以前は日に何度も店に顔を出して作業をして、また出かけていた。
だが、今はほとんどその姿を見かけない。
とはいえ、王国のルールでは「いかなる店も60日間放置された場合強制閉店とする」旨が明記されている。
しかし閉店とはなっていないことから察するに、強制閉店だけは避けようと、最低限店に顔を出してはいるらしい。
だが、どの妖精たちもただ暇そうにしている様子ではなく……おそらく、彼が店から離れる直前に頼まれていたことが全てそのままなのだろう、
荷物の横でじっとしている輸送妖精、空になった棚のそばで売上金の袋を眺めながら佇んでいる販売妖精、出来上がったビンやガラスが入っているであろう箱を気まぐれに積み替えて暇をつぶしているらしい作業妖精……
確か、最後に店が稼働していた頃は倉庫が溢れていたりもしていたはずだ。
妖精たちをタスクフリーにしたくてもできなかったのかもしれない。
そんな状態でも強制閉店だけは避けようとしているというのは、どういう心境からなのだろう。
経験を無にしたくないからか。いつかまた、店に戻ってきて何事もなかったかのように仕事をするつもりなのか。
もしかすると、本人ですらどうして店を維持したいのか、わかっていないのかもしれない。
だが、店に顔を出す度にお知らせ妖精が飛んできて、あちこちに妖精たちが待っている中で、
それでも店を維持しようとするのは、ある種の意地なのかもしれない。
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