「……一緒に行きたい、私だって。この世界を捨ててでも、あなたのところへ。でも!」
「あなたは今の記憶を持って元の体に戻れるわ。でも、私があなたの世界に行けば、やっぱりどこかで生まれるところから始まる。あなたと年齢もずれてしまうし、記憶を取り戻せても、何年もかかる。どこに生まれるかもわからない……」
「それだけじゃない! ある世界でついた名前は別の世界に持っては行けない。あなたも戻ったら私の名前を忘れてしまう……! 今だって、元の世界でのあなたの名前も分からないのよ!」
「そんなこと、できる、の? あなたの世界にもそんな本はあると思う、あると思うけど、誰が書いているかも、どれだけ書かれているかもわからないわ。 誰よりも書いて、売って。世界中に広げようだなんて……」
「うん、そうね。あなたなら。信じる。信じてるから。信じるから。私も行く。あなたの出すサインを、見つける。諦めないから」
「私は絶対に思い出して、あなたのことを探すわ。 私が諦めなければ。あなたが書き続ければ。私たちはまた会える。その時は――」
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