木漏れ日と鳥のさえずりを心地よく聞きながら、私たちは水浴びをする。
こんな日には妖精のみんながこの水辺に集まってくる。
私たちはふらふらとお金持ちが居ればついって行き、飽きたらまたふらふらとこうやってのんびり過ごす。
店を構えている人やこの島の住人達は私たちを気まぐれな妖精なんて言うけれど、そんな名前も意外と気に入っている。
水浴びからいつの間にか水遊びに変わり、きらきらと宙を舞う水滴を眺め追いかけては避ける。
そんな遊びをしながら遊んでいたが、飽きた私はふわりと水辺の芝生に腰を下ろした。
「あら、貴女帰って来てたの?」
後ろから声を掛けられ、振り向くと木の葉の妖精と呼ばれる彼女がこちらをみて微笑んでいた。
妖精には大抵あだ名のようなものがついている。
私は周りから湖畔の妖精と呼ばれているし、木の枝の妖精と呼ばれる者もいる。
大抵は好んで過ごしている場所や自然の名前になる。
店に仕えている妖精は買い付けや仕入れたものの輸送をするので輸送妖精や、作業をするから作業妖精なんて無粋な名前がついているが、私たちはそういった呼ばれ方を好まない。
「前のマスターがつまらなかったの」
水辺で遊ぶ仲間を眺めながら私はそう呟くと、彼女が隣に腰を下ろした。
「貴女ったら、ほんと楽しい事好きね」
「つまらない人なんか私の相手にふさわしくないもの。お金持ちで楽しい人がやっぱりいいでしょ」
私はそう言って彼女に笑顔を向けると、立ち上がって羽を伸ばした。
二、三度ゆっくりと羽の感覚を確認してから、空に飛び立つ。
湖の上をぐるりと旋回して急降下し、水面ぎりぎりを飛ぶ。風の心地良さと水の冷たさが頬を撫でた。
ふと、視界の端に地図を持った妖精を見つけた。あの地図は高いものだ。
私はそっと彼女の前に降り立つと、微笑んで手を振った。
「貴女、ここで何やってるの?探索?」
少し驚いた顔をした彼女はゆっくりと息を吸うと、手に持っていた地図を鞄の中に仕舞った。
「びっくりした。あなた、急に降りてくるもの」
「ごめんね、ちょっとその持っていた地図が気になったからさ」
「これはレベル2の地図よ」
「それ、高いやつだよね」
「まあね。私の旦那様が今回は魂の水が欲しいって言うからここまで来たのよ」
「それは大変だね」
「あなた、気まぐれな妖精でしょ?私たちのところに来ない?」
「どうして?お金持ちでのんびり私を養ってくれるならいいけど」
「私の旦那様は大丈夫よ」
「この前の時もそう言ってついて行ったらつまらなかったもの」
私はそう言って、足元の小石を蹴った。
前のマスターはずっと私たちを倉庫に閉じ込めて、何もさせてくれなかったからラム酒作りの時に少し手伝って逃げ出したのだ。
ラム酒の作り方を知っているのは私たち気まぐれな妖精しかいない。
どうやら噂ではラム酒を作るのは莫大なコストが掛かるので時折作るという人しかいないらしい。
確かに、こだわって作る分、時間もお金も掛かるだろうけど、その程度のお金を使えないようでは、私たちの基準には到底及ばない。
「近いうちに、旦那様はラム酒を作られるわ。その為に私はここにいるの」
彼女が自信たっぷりの笑みを私に向ける。
またあの楽しいラム酒を作れるのなら、ついて行ってもいいかもしれない。
「分かったわ。じゃあ着いて行ってあげる」
私がそう微笑むと、彼女の辺りを飛び回る。
木漏れ日が私の羽に反射して辺りをきらきらと輝かせた。
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文字数が多すぎて読みにくくなるので、ここまでに区切りました。
めちゃくちゃ中途半端なので、続くかも?
とりあえずはここまで。
ハーブ印のパセリ店
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