「お宅の組合員の妖精さんが行方不明って聞いたけど。」
「ああ、聞きましたよ。全く荒唐無稽な話で。」
「本当ですわね、それじゃまた。」
……
「探られている。言葉のパターンが増えている。」
「パターンかぁ。俺もこのメモを見つけるまで気づかなかったが。」
「君のとこの常連さんだったんだっけ。」
「ああ、一言相談してくれれば…。」
「閉店したときは驚いたが、まさかそんなね。」
「どうなったかはわからんが…無事を願うしかできないよ。」
「でも彼のレシピは君が買えたんだ。なんとかやっているハズさ。」
「…」
「それで頼み事って?」
「俺を通報してほしい。」
「は?」
「掟に反するレシピを作る。そうすれば俺の身に何が起こるか分かるはずだ。」
「いやまて、そしたらお前…」
「どうなるか分からん。いきなり消えるのかもしれない。ともかく代わりに見届けてほしい。この、妖精の羽根を材料にする。」
「…」
「少なくとも店主は皆、自分の意思を持っているだろう。パターンで会話はしない。
妖精は…店によりまちまちだったが、少なくともうちのやつはパターンで動いてはいなかった。
自分の意思を持って生きていた。
それをこんな風に…羽根だけになって…許せるか。
彼女に何が起きたか知りたいんだよ。」
「身をもって知ろうって…多分帰ってこれないぞ。」
「そうだな。でもこれから俺に何が起きるのか、見届けて欲しいんだよ。」
通報はお前に非が無いようにするためだ。なんとか頼む。」
「…分かった。」
…
「それじゃ通報する…」
「たのn」
―――――――――――――っ!
「ここはどこだ?」
「レシピの掟、生物をいじめたり虐待してはいけません。」
(!?…青い…なんだあれは!?)
「レシピを手放すか、変更するか選んでください。」
「は…?」
(こいつが黒幕か。消されると思ったが…案外甘いんだな。)
「おい!うちの妖精に大変なことをしてくr…」
(…口が動かない!?)
「レシピを手放すか、変更するか選んでください。」
(体も動かないか)
「…」
(選ぶまで帰さないつもりだな)
「…」
(うちの妖精を大変な目に合わせておいて文句のひとつも言わせないってか?)
「…」
(どうせ聞こえてるんだろ!?うちの妖精を返せ!)
「…」
(おい!!何か言え!!)
「…」
(自分が管理しきれなくなったら消すだけしかできないのか!?)
「…」
(うちの妖精は懸命に働いてくれてたんだよ!改装繰り返しながらもな!!)
「…」
(おい!きいて…)
―――――――――――――
「組合長―。組合セールやってみましょうよ。」
「あー考えておく。」
「どうしたんですか、最近ぼーっとしちゃって。」
「いや、ちょっと疲れてて…」
「そうなんですかー。まあおからだは大事にしてくださいなー。」
(…結局あいつは帰ってこなかったか。)
(あの瞬間何があったか…見ていたはずなのに記憶が抜け落ちてる。)
(見届けてくれなんて言われたのになぁ。)
(ただ…必ず伝えよう。あの得体のしれない何かの手が届かない場所で。必ず)
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