豆だ!オーガだ!節分読み聞かせ会
MUTOYS名作選 『ジェム太郎』
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。ある日、おばあさんは川へ洗濯に、おじいさんは海岸へ海藻採りに向かいました。
おじいさんが海岸で海藻を集めていると、沖から波に乗って、たいそう大きな宝石貝が流れてきました。
「これは、大きなピンクジェムが取れるに違いない。」ピンクジェムは高く売れます。きっとよい生活の足しになることでしょう。おじいさんは、宝石貝を家に持って帰りました。
宝石貝を見たおばあさんは、すぐさま貝を開きました。すると中から赤子ほどもある、それはもう大きな大きなピンクジェムが現れました。
これで余裕のある余生を送れると、おじいさんとおばあさんは安堵しました。しかし、そのとき、ピンクジェムからなにか音が……
ぴきっ
ぴきぴきっ
ぱっかーん
なんと!ピンクジェムが真っ二つに割れ、中から男の子が出てきたのです。
せっかくの宝石が!おじいさんとおばあさんは怒り心頭です。しかし、おじいさんもおばあさんも、根は優しかったので、男の子にジェム太郎と名付け、時々嫌味を言いながらも大切に育てました。
十余年が過ぎました。ジェム太郎は立派な青年に育っていました。
ある日、ジェム太郎はおじいさんとおばあさんに言いました。
「おれがピンクジェムを突き破って生まれちまったせいで、じさまにもばさまにも辛い思いをさせちまった。罪滅ぼしさせてほしい。」
そして、ジェム太郎は、Oヶ島へオーガ退治に旅立ちました。Oヶ島には、オーガたちがほうぼうから奪ってきた財宝があると、もっぱらの噂です。
旅立つジェム太郎に、おじいさんとおばあさんは、すああまとすああああまとすああああああまを持たせました。
ジェム太郎が歩み進んでいると、「ジェム太郎さんジェム太郎さん」何者かが声をかけてきました。ジェム太郎が振り向くと、、、
なんと!そこにいたのはあの『わんこ』!わんこは未確認超常生物ではなかったのです!
ジェム太郎さん、ジェム太郎さん、お腰に付けたすああま、1つ私にくださいな。
なんと!すああまたった一つでわんこがお供になるというのです!エビでタイを釣るどころの騒ぎではありません!
ともあれ、ジェム太郎とわんこは、Oヶ島へと進みます。
ジェム太郎とわんこが歩み進んでいると、「ジェム太郎さんジェム太郎さん」何者かが声をかけてきました。ジェム太郎が振り向くと、、、
なんと!そこにいたのはあの『にゃんこ』!にゃんこは古文書にのみなを現すおとぎ話の存在ではなかったのです!
ジェム太郎さん、ジェム太郎さん、お腰に付けたすああああま、1つ私にくださいな
なんと!すああああまたった一つでにゃんこがお供になるというのです!エビでタイを釣るとは正にこのことです!
ともあれ、ジェム太郎とわんことにゃんこは、Oヶ島へと進みます。
ジェム太郎とわんことにゃんこが歩み進んでいると、「ジェム太郎さんジェム太郎さん」何者かが声をかけてきました。ジェム太郎が振り向くと、、、
なんと!そこにいたのはあの『うさこ』!うさこは遥か空の向こうに住まう神霊ではなかったのです!
ジェム太郎さん、ジェム太郎さん、お腰に付けたすああああああま、1つ私にくださいな
対価に要求したのはレシピ出来立てほやほやのすああああああま!少し厚かましくありませんか?わたしはうさこが嫌いになりました。
ともあれ、ジェム太郎とわんことにゃんことうさこは、Oヶ島へと向かいました……
山を越え、野を越え、谷を越え、川を越え、荒波を越え、ジェム太郎一行は、ついにOヶ島にたどり着きました。
ざばぁーん、ざっぱぁーん、ここは絶海の孤島、Oヶ島。悪いオーガたちの総本山です。さあ、金銀財宝目指して突撃です!
やぁやぁやぁ!出会え出会え!今まで襲うばかりで襲われることに不慣れなオーガたち、急襲者にてんやわんやです。
さあ、財宝をぶんどるならこの機に乗じるしかありません!すすめ、すすめ、ジェム太郎!
ですがしかし、多勢に無勢、オーガたちも敵の全容を把握し、態勢を立ち直しつつあります。
いそげ、いそげ、ジェム太郎!
ついに、ジェム太郎たちはOヶ島の宝物庫にたどり着きました。噂通り、たくさんの金銀財宝がそこにありました。
しかし、そこで、ついにオーガたちに追いつかれてしまいました。退こうにも、退路はすでにありません。ジェム太郎は、なにかないか、必死で周囲を見回しました。
そして、ひらめきました。
「オーガさんたちや、この度の狼藉陳謝します。すべては、田舎で苦しむじさまばさまのため、恩返しのためにと考えたことなのです。」
ほう、殊勝なことだ。オーガたちは感心し、ジェム太郎の話を聞いてくれるようです。
「しかし、考えてみれば、このようなこと許されるはずがございません。人様の財産を奪うなどと。私が間違っておりました。しかし、しかしです。」
「何も持たずに帰っては、じさまもばさまも飢え死んでしまいます。どうにか、財宝がいるのです。そこで、です。交換、というわけには行きませんでしょうか?」
ジェム太郎は、財宝と何かを交換してもらう心づもりです。しかし、ジェム太郎一向にそんな持ち物はあったでしょうか?
「そう、ここにいるのは、幻のけものたち!こいつらと交換でどうでしょう。」
なんと!ジェム太郎はわんこ・にゃんこ・うさこを、財宝と交換してもらうつもりです!確かに価値は釣り合うかもしれませんが・・・この鬼!人でなし!悪魔!信じられません。名前を呼ぶことすら憚られます。
話をきいたオーガたちは、相談もほどほどにジェム太郎の提案を受け入れました。それほどにわんにゃんうさの価値は高いのです。
わんこたちにとっては、たまったものではありません。彼らは、金銀財宝の分け前をせびるつもりでした。しかし、これではそれどころではありません。財宝どころか、自由すら失ってしまいます。
でもここでジェム太郎を見捨てたとて、オーガたちに勝てるべくもありません。わんこたちには、もう何もできることはありませんでした。すべて、遅かったのです。
えんやとっと、どっこらせ、オーガたちから譲り受けた金銀財宝を曳きながら、ジェム太郎はおじいさんとおばあさんのもとへ向かいます。
ジェム太郎だって、何も思わないわけではありません。しかし、自分の、それ以上に育ててくれた恩人の生活には変えられません。そう、自分に言い聞かせながら、帰り路を急ぎます。
おじいさんと、おばあさんのために。不幸の源である、自身の罪滅ぼしとして。
お し ま い
エピローグ
ここはOヶ島、オーガの住まう絶海の孤島です。ある時から、周囲には妙な噂が流れ始めました。
Oヶ島から、オーガとは似ても似つかないかわいい鳴き声がする、と。
わんわん、にゃーにゃー、うさうさ。
どこか少しおかしさを感じもしますが、たしかにこれはかわいい、いやされる。
そして、その噂の頃から、オーガたちによる近隣への襲撃は、ピタリと止んだといいます。一体、何があったのでしょう?島の中で、オーガは、そして、可愛い鳴き声の主たちは、何をしているというのでしょうか?
それは、誰も知りません。
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