クリスマス読み聞かせ会2022
『ハバ鼻のミノカイ』
♬まっ赤なお鼻のミノカイ※さんは いつもみんなの笑いもの〜〜
※特徴的な角をした雪国に住むミノタウロスの仲間
冬のある日の夜、いつもならまっ赤っかなおじいさんは大忙し。
子どもたちのもとへ、ステキなものを届けてまわります。
けれどもおじいさんもお年です。体力的にキツいものがあります。
今年はとくに寒く、節々がひどく痛んだおじいさん、とてもとても大変そうです。
「わしゃもう限界じゃ……今から代わりなんぞ探せんし、どうすればいいんじゃ……」
責任感の強いおじいさんは悩みます。それでも、暖炉を焚いたお家から長く離れる勇気は出ませんでした。
おやおや、おじいさんのおうちの横にある小屋もなんだかいつもと様子が違います。
小屋の中には、おじいさんのそりをひくミノカイさんたちが暮らしています。
ふつうならとっくにお声がかかっていなくてはいけないころです。みんな、おじいさんの心配をしています。
どうしたんだろう。だいじょうぶだろうか。あっちでガヤガヤ、こっちでガヤガヤ、なんだか騒がしくしています。
あらあら、そんな中、一頭だけ静かに外を眺めているミノカイがいます。どうしたのでしょう?
そのミノカイは、生まれたときから他のみんなと少し違っていました。お鼻がまっ赤だったのです。
その上、どういうわけかお母さんはおちちを飲ませるのを嫌がっていたので、その子は体も小さく、お鼻の色をからかわれてもやり返せずに育ちました。
小屋のみんなはやさしいけれど、そうして育ったその子は、輪の中に入れずにいたのです。
そこへ、勇気をふりしぼったおじいさんがなんとか小屋までやってきました。
あまりの寒さにすでに体は凍てつき、節々も限界を迎えようとしています。
苦しむ中、一頭の赤い鼻をしたミノカイがおじいさんの目に止まりました。
そのミノカイは、他のミノカイたちの輪から外れ、なんだかかなしそうにしていました。
その姿に、やるべきことができない自分の情けなさを重ねたおじいさんは、赤い鼻のミノカイに近づいて話しかけました。
「なんだかつらそうじゃな。せめておまえさんにだけでもなにかしてやれるといいんじゃが……」ふるえながらも考えようとしています。
しかし、やはり限界でした。ふっとおじいさんは倒れ込み、そのときおじいさんの顔が、ミノカイのまっ赤なお鼻に触れました。
『ひっ、ひぃぃ~~〜〜!!!!』
その瞬間、おじいさんは意識を取り戻し跳びはねました。
そう!ミノカイの赤鼻は色に違わぬハバネロホット!!激辛50倍だったのです!!!
そりゃあお母さんも大変だったでしょう。おちちを与えるたびにヒッリヒリです。よくぞここまで育て上げてくれたものです。母は偉大!
そんな激辛を味わったおじいさん、すぐさま体がぽかぽかしてきました。しまいには顔から汗までういてくる始末です。
温まった体に、次第に節々の痛みもやわらいできました。「そうじゃ!」おじいさんはひらめきました。
このぽかぽかがあれば今年も子どもたちのところを周れるに違いありません。
「よし決めた、これからはおまえさんと一緒に配りに行くぞ!」
おじいさんからの突然の指名に、赤い鼻のミノカイはびっくり!でも、それと同じくらいうれしくも思いました。
今まで嫌いだったまっ赤な鼻も、好きになれるかもしれない。なんだかそうも思えてきました。
お互いためらう理由はありません。さあ繰り出そう夜の空へ、贈り物をたくさんつんだそりとともに!
シャン シャン シャン。冬の夜空にまっ赤なお鼻をしたミノカイのひくソリがかけていきます。まっ赤な服を着て、お顔までまっ赤にしたおじいさんをのせて。
♬〜〜さむい夜道じゃ、激辛のおまえの鼻が役に立つのさ。いつも泣いてたミノカイさんは、今宵こそはとよろこびました。
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