土鉱夫の朝は早い。スピポ型の目覚ましを止め、ログハウスの窓から差し込む光に目を細める。
???「マスター!お客様がお見えですよ!」
その高い、しかし耳障りではない声を聞き、店の方へ、オフトゥンから起き上がり向かう。
「また買い付け人か?バラ売りはしねぇといつも言って...なんだ、誰もいないじゃないか」
と、先程自分を呼びつけた声の主の方へと視線を向ける。
妖精「だって、ああでも言わないとマスター、なかなか部屋から出て来ないでしょう!なーにが土鉱夫の朝は早い、ですかまったく!」
「ああ分かった、分かったよ。ところで、いつもの作業の方はどうなってる?」
妖精「土を掘る作業の事ですね。それなら、とっくに終わってみんな帰って来てますね。また次の指示を?」
「ああ。...いや、少し待て、...そうだな、地図とクワが減ってきてたな。買って来るように言っておいてくれ。」
妖精「わかりました、では」
今のは、この店のほぼ全てを取り仕切ってくれている妖精だ。妖精なんてのに最初は戸惑ったものだが、彼女はとても良くやってくれている。他の妖精達も、彼女を慕っているようで、非常に心強い。口煩いのが玉に瑕ではあるのだが。
***
彼女に出会ったのは、116日前のこと。
突然小さな店舗を1つ任されることになって、右も左もわからない時に、不意に目の前に現れた。話を聞いてみると、俺は指示を出すだけでいい、販売輸送その他全ての作業は妖精達が行う、なんて信じられない話ばかりだった。
そこで俺は、1つ指示を出してみることにしたんだ。
「5回素材を探す!」
するとどうだろう、たちまち周りの妖精は見える範囲で散らばって行き、草を摘み、土を掘り、石を拾い始めた。それから俺は、少しずつ彼女らに仕事の指示を出し始め、それに没頭するようになった。
***
「さて...倉庫の確認でもしておくかな」
立ち上がり、店の奥へと向かう。少し埃っぽい匂いを嗅ぎつつ、一品一品、見て回る。
途中、地図とクワが置いてある棚の隣、空いている場所に、買って来た地図とクワはここに置くように、と倉庫妖精へのメモを残す。
やがて、確認を終え、自室へ戻ることにする。
自室へ入ると、床に散らかしたままの福引券を拾い集め、窓辺に束ねて置いておく。
「まあこんなもんか、少し眠くなってきたな...」
妖精「寝ないでください!先程仕入れに向かわせた妖精達が帰ってきましたので、指示をお願いします。」
突然現れた妖精が言う。
「なんだ、もう戻ったのか。...いや、結構経ってたみたいだな。まあいい、倉庫の方に指示は残してきたから大丈夫だ。それから、収納したらまたいつものように土掘りに向わせてくれ」
少し驚いてから、気を取り直して指示を出す。
妖精「はい、そのように伝えます」
「じゃあもういいな、少し俺は寝る。土掘りが終わったら起こしてくれ。ついでに、ウィンナーコーヒーも用意しといてくれ。」
妖精「わかりました、それではおやすみなさい。」
そのまま姿を消した妖精のあとを眺め、やがて意識はまどろみの中に消えて行く......
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